歯ぎしり ・ くいしばり

歯を守るには、細菌(歯垢)のコントロールと力のコントロールが必要

毎日歯を磨いて清潔な状態を保つ、それだけでは歯を守ることはできません。


歯ぎしり ・ 噛みしめ

歯周炎 ・ 知覚過敏 ・ 歯の破折・・・
歯ぎしり、噛みしめは歯の喪失の大きな原因です。


歯にかかる力をうまくコントロールしていくことも重要です。歯やそれを支える骨に害をおよぼす力に、歯ぎしりや噛みしめがあります。
これらは「ブラキシズム・クレンチング」と呼ばれています。
代表的な歯ぎしりは中枢性のストレスに対する生体の防御反応としての生理的な現象であることが分かっています。その他、歯ぎしり、噛みしめの原因として、遺伝・ストレス・喫煙・飲酒・かみあわせの悪化・胃食道逆流症・薬では、うつ病薬である選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)の服用などがあります。
また、口腔内の不備、例えばむし歯、高さの不適正な冠がある、歯が抜けたままになっている、などによるかみ合わせの変化が有った場合にも、歯ぎしり・噛みしめが起こりやすいと言われています。
通常、上下顎の歯が接触する時間は1日の中で20分程度と言われています。上下の歯が接触するのは、物をかむ時と飲み込む時、会話時などに一時的に触れるだけです。それ以外の時には、上下の歯が触れることはありません。しかし、集中して作業している時や緊張状態が続く場合に歯を接触させたり噛みしめたりすることがあります。

歯ぎしり、噛みしめの影響

歯ぎしり・噛みしめは歯や顎の骨に異常な強い力がかかり続けること、特に日中の無意識の噛みしめは歯の喪失に大きく関与しているとの研究報告があります。何かに集中したあとに顎が疲れたようなだるい感じがある方は要注意です。

  • 歯が異常に擦り減る
  • つめものがよく外れる
  • ムシ歯になりやすい
  • 歯の付け根が楔状にくびれている
  • 歯がしみる
  • 噛むと痛い
  • 朝、口周囲の筋肉が重だるい
  • 舌の横、頬の内側の粘膜に歯型がついている

このような症状を感じている方は歯ぎしり・噛みしめをしている可能性があります。
歯ぎしり・噛みしめは、歯の磨耗、破折、歯根の露出、知覚過敏、歯周炎、ひいては歯の喪失の原因であると認識して下さい。また、歯ぎしり・噛みしめは睡眠の質を低下させ、睡眠障害を助長させるとの精神科専門医の指摘もあります。睡眠医学の分野では疾病として位置づけされているそうです。

歯根破折とは

骨が折れる事を「骨折」と言いますが、歯の場合は「破折(はせつ)」と呼びます。
歯の白い部分(歯冠部)が割れたり欠けたりする事を歯冠破折と呼び、歯肉の中にある根っこの部分(歯根)が割れたり欠ける事を歯根破折と呼びます。歯根破折はほとんどが神経を取り除いた歯に起こりますが神経が有る、生きている歯でもまれに起こります。
*神経を取ってある歯は枯れ木のような状態になり割れやすくなります。

2005年3月の(財)8020推進財団の報告では抜歯の主な原因は、1.歯周病42%、2.むし歯32%、3.その他(智歯周囲炎など)13%、4.歯根破折11%、と相変わらず歯周病とむし歯で全体の74%を占めています。
しかし、このデータはメインテナンスを行っていない方の場合です。2004年Axelsonらの調査では徹底したプラークコントロールを行っている場合は歯周病が5%、むし歯7%、歯根破折62%と断然歯根破折が多い結果でした。
歯周病、むし歯の多くは予防可能と考えられ、また早期の段階での処置によって保存することが可能です。しかし、歯根破折の場合、早期発見は難しく、もし発見出来ても処置することは困難です。また、その予防や保存は容易ではありません。

歯根破折の原因
  • 歯ぎしり・噛みしめ・食いしばりのある方。
  • 噛む力が強い方。
  • 虫歯治療を繰り返すことにより歯質が少なくなった。
  • *歯の一部にひずみが集中する。
歯根破折の症状
  • 初期は殆ど自覚症状が有りません。
  • 噛むとわずかに痛い・違和感がある。
  • 歯グキが腫れる。
  • 被せものが土台からはずれる。
  • *自覚症状がなく定期検診時のレントゲン撮影や歯周ポケット検査で見つかる場合もあります。
       

歯ぎしり・噛みしめから歯を守るために

1.薬物療法

歯や顎の痛みが強いときには、非ステロイド性消炎鎮痛薬を処方します。


2.認知行動療法(リマインダー法)

歯ぎしりや噛みしめをどんなときにしているかをご自身で発見してもらい、それを止めるように自身でコントロールする方法です。昼間の歯ぎしり・噛みしめは、無意識に行う人が多いので、ご自身の生活習慣を注意深く観察してもらいます。自覚できるようになると意識的にコントロールできるようになります。
具体的には、歯ぎしり・噛みしめをしている場所、例えばキッチンやパソコンの横などに「噛みしめないように!」のシールを貼り付けて常に意識するようにする。睡眠時以外に有効な方法です。


3.自己暗示療法

眠っているときのことなど、コントロールできないと思っている人が多いと思います。しかし、「明日の朝何時に起きなければいけない」と思って寝ると、不思議とその時間に目が覚めるという経験をしたことはありませんか。眠っていても潜在意識が作用して、正確にその時間に目が覚めるというかなり難しいことを私たちはできるのです。ましてや、上下の歯を合わせないようにリラックスして眠るなどという作業は「その気」になりさえすれば意外と簡単にできるものなのです。成功の秘訣はどれだけ「その気」になるかにかかっています。
前準備として枕無しで寝ましょう。そうすると頭が上を向くので、口が開きやすくなるからです。慣れない場合はバスタオル等を使って徐々に低くしていくと良いでしょう。
呼吸に意識を傾け、吐くときに脱力するのを繰り返します。また、たとえば「リラックスリラックス」など自分が落ち着ける言葉を唱えるのも良いでしょう。翌朝、今あるすべての症状がなくなって、すっきり爽やかに目覚めるあなたの姿をイメージしながら眠りに入って下さい。


4.口腔内の環境改善

原因の可能性のあるかみ合わせの不備の有無を調べます。必要であれば歯の治療や高さの合わない冠の調整などを行います。歯の抜きっぱなしも、かみ合わせに悪影響を及ぼすため改善することが重要です。


5.マウスピース療法

ご自身の歯型に合うように作成されたマウスピースを装着することにより、歯ぎしりや噛みしめ時に上下の歯が接触することを防ぎ、歯や骨にかかる異常な力を軽減します。マウスピースの使用で歯ぎしり、噛みしめはコントロールできませんが、歯や顎にかかる異常な力を緩和する目的で使用します。睡眠時の歯ぎしり・噛みしめに有効な方法です。