歯周病(歯槽膿漏)ってどんな病気?

歯周病とは歯周病菌が増殖することで起こる細菌感染症です。

現在、30歳以上の日本人の約8割が歯周病に罹患していると言われています。
しかし、実際はその1/60の方しか歯科医院に通院していないそうです。
59/60の方は歯周病に気付いていないという事になります。なので、歯周病で歯を失う方が多いのです。

 

一度歯周病になると元には戻りませんが進行を停止する事は可能です。
いかに早く初期の段階で歯周病に気付いて対応するかです。歯周病は進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり(痛みはほとんどの場合ありません)、放置すると歯が抜けてしまうばかりでなく、歯周ポケットの傷口から歯周病菌が血液を介して体に入り込み菌血症を起こすため全身の健康にも深刻な影響を及ぼします。

*菌血症:本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる状態。
「細菌が血液中に存在すること」を指し、そのまま治療せずに放置すると細菌性髄膜炎や感染性心内膜炎など重症の感染症へと進展する。



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歯周病と全身との関係

歯周病菌は、歯周ポケットの傷口から血管に入り、血流にのって全身を回ります。
歯周病菌の持つ毒素は全身の血管壁を日々障害し続け、全身疾患にも影響をおよぼすことが報告されています。


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誤嚥性肺炎
日本人の死因の1~3位は三大疾患 (ガン、心疾患、脳血管疾患)ですが、それに続く4位が肺炎です。 65歳以上では死因の1割を占めます。高齢者の肺炎は、主に誤嚥(ごえん。口の中の唾液、食べ物が気管の中に入り込むこと)によって、口の中の細菌が肺にまで達し炎症を引き起こすことがわかってきました。年齢的な衰えによって口の中の細菌が気管や肺に入りやすくなることがわかっています。日常の歯磨きや入れ歯の清掃などを十分に行っていないと、口の中の細菌は繁殖を続けます。口の中をきれいにして細菌を減らすことで、誤嚥性肺炎のリスクを減らす事が出来ます。

動脈硬化
歯周ポケット内には多量の歯周病菌をはじめとする細菌が棲息していて、炎症で歯周ポケット内の上皮が薄くなると、細菌は簡単に血管内に侵入していきます。血管内に歯周病菌が侵入すると、動脈硬化が悪化することが実験で確認されています。動脈硬化が進行すると狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や脳梗塞といった脳血管疾患になりやすくなります。

心臓疾患
前述の動脈硬化による狭心症や心筋梗塞といった虚血性疾患に加え、心臓の弁に障害のある方では、血液中に入った細菌が弁に付着して増殖し、細菌性心内膜炎を引き起こすことがわかっています。

早産
日本においてその関連性はまだ確立されていませんが、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍、早期低体重児出産に対しては5.3倍の危険率があるとされています。

糖尿病
以前から、糖尿病患者では歯周病が発症・進行しやすいことが知られていましたが、最近の研究では逆に、歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすということもわかってきました。実際、歯周病の治療で糖尿病が改善する場合があります。

骨粗鬆症
骨粗鬆症と歯周病の関連性については、多くの研究が報告され、その関連性を示唆する報告も多数ありますが、まだ確実なものとはいえません。しかし、閉経後女性の歯周病患者では骨粗鬆症の検出率が高く、女性ホルモン欠乏により、閉経後に発症した歯周炎の進行過程の影響を及ぼすことが考えられます。

(参考文献 『歯周病と全身疾患』 ヒョーロン)

歯周病の原因

口の中にはおよそ300~500種類の細菌が住んでいます。
これらは普段あまり悪いことをしませんが、砂糖を過剰に摂取したり、歯ブラシが全体に行き届いていなかったりすると細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これを歯垢(プラーク)と言い、粘着性が強くうがいをした程度では絶対に落ちません。
歯垢(プラーク)は取り除かなければ硬くなり、歯石と言われる物質に変化し歯の表面に強固に付着します。これはブラッシングだけでは取り除くことができません。この歯石の中やザラザラした歯石の表面に更に細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。

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次のことは歯周病をより悪化させる因子(リスク・ファクター)となります。

  • 1. 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ(咬合性外傷)
  • 2. 不適合な詰め物、冠や義歯
  • 3. 不規則な食習慣(肥満)
  • 4. 喫煙
  • 5. ストレス
  • 6. 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
  • 7. 薬の長期服用
  • 8. 遺伝、家族間感染


歯周病治療について

歯周病は細菌感染症です。
そのため治療は細菌をできるだけ排除し、ふたたび歯周病菌がそこに住まないような環境を作り、維持していきます。
つまりより的確なブラッシング、磨いていると磨けているの差を少しでも縮める事です。

さらに食生活の改善。軟らかいもの、口当たりのよいものを好んで食べる近代文明食では歯周組織に対する刺激が足らず、それによって組織が脆弱化して歯周病の発症、進行を招いています。

また砂糖の過剰摂取、加工食品、インスタント食品、高カロリー、添加物まみれの食事など、現代の食生活の乱れが歯周病の発症進行と関係しています。



ブラッシングと食生活、この2点を改善する事が歯周病治療には大切です。
ブラッシングだけでは歯周病は治りません。



家族に感染する可能性

歯周病は、細菌が外部から侵入して口腔内で増殖することによって感染し、発症します。
そのため、夫婦間・親子間で感染、伝染する可能性があることから家族全体を対象として治療を行う必要性があります。


根面むし歯を知っていますか?

歯は2つの部分に大別されます。エナメル質に覆われていて歯ぐきから上に出ている部分を歯冠といい、通常歯ぐきの中(歯槽骨の中)にあって表面を固いエナメル質ではなく、弱いセメント質で覆われている部分を歯根といいます。
歯周病や歳を取って歯ぐきが下がっていくと、その歯のつけ根(歯根)が歯ぐきから露出してきます。外に出て露出した歯根は、エナメル質に覆われた歯冠と比べてむし歯菌の出す酸に弱いため、むし歯になりやすいのです。
根面むし歯になった場合は神経が直ぐ近いので神経の処置が必要な場合が殆どなのです。根面むし歯は1本から数本まとめて発生することが多い病気です。さらに、このむし歯は見つけにくく進行のスピー ドや広がりも早く時には抜歯になってしまいます。そうならないためには糖質の摂取・間食に注意しフッ素入りの歯磨剤や洗口剤の使用や普段のブラッシングに加え歯間ブラシを使用すること、定期的なメインテナンス・SPTをかかさない事が重要になります。